働いている人のメリット

IPOをスムーズに成功させたい企業の経営者もしくは上場準備担当者の方へ 「上場準備を支援した会計士」 と 「実際に上場準備を経験した元CFO」 がそれぞれの視点でIPOを進めていく上での検討・課題点の解説を行っていきます。 ・「会計士」は、上場準備における企業の要対応項目や考慮すべき点について形式面を中心とした解説をします ・「元CFO」は、IPOの実体験を踏まえた失敗談やベストプラクティスを含む社内の上場準備対応実務を中心とした解説をします


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今回は「IPOを進めている企業で働いている人のメリット」について解説します

 

  • 上場準備担当者を含むコアメンバーの方へのメリット

前回のコラムでは、上場準備を進めていく上で、コアメンバーの選定が重要で、その認識を統一することが重要であるという点について解説を行いました。

今回は、そのコアメンバーにとってIPOを経験することのメリットについて触れたいと思います。ここでは、ストックオプション等の金銭面でのメリットを除き、以下の3点を挙げたいと思います。

・ 会社の飛躍的な成長を支える重要な役割を経験

・ IPOを達成したことによる経験を高く評価してくれる人財市場がある

・ 上場準備を通じて社外の様々な人脈が形成

以下、それぞれについて具体的に話をしたいと思います。

 

  • 会社の飛躍的な成長を支える重要な役割を経験

IPOは企業にとって長丁場の非常に大きなチャレンジであり、第二の創業にも近い重要な位置づけとなります。そのような企業の創業にも近いチャレンジの中で、コアメンバーとして参画することは、いわば創業メンバーとしての位置づけになるはずです。通常は企業にとってIPOは1度しかない経験となりますので、そのような場面に出会えること自体もなかなかあることではありません。

また、IPOを通じて、企業は今後の目指すべき方針、成長事業の特定と育成、急激な成長を支える管理体制の構築を行い、外部からの資金をどのように活かして、還元するのかを考え、実現させていくことが求められます。

このように、IPOをするタイミングに出会える機会と求められる内容も非常にハードルが高いことから、相当に重要な役割を経験することは間違いありません。これは自己の能力向上や経験値の観点からも大変貴重であると言えます。

 

  • IPOを達成したことによる経験を高く評価してくれる人財市場がある

IPOが成功する確率はどれくらいでしょうか。上場準備経験が長い監査法人時代の上司が言っていたのは、IPOを目指して、そのスタート位置に立てるのが10%、そこから実際にIPOできるのが10%と言っていたので、掛け合わせると1%程度になります。そのため、そもそもIPOを達成したコアメンバーはそれほど多いわけではありません。そのため、IPOでコアメンバーとして参画した経験はこれからIPOを目指す企業にとっても喉から手が出る程、欲しい人財となります。実際に上場準備の請負人として、企業を渡り歩くような人財もいます。また、仮にIPOまで達成できなかったとしても、上場準備の過程で得た、企業の管理運営の実務上のポイントは、他社でも大いに活用できることが多く、IPOまで達成しないとそれまでの経験が無駄になるということはありません。

 

  • 上場準備を通じて社外の様々な人脈が形成

上場準備の際に対外的な活動が必要になるのは社長だけではありません。特にコアメンバーは、証券会社や監査法人などの上場準備を通じて日常的にやり取りを行うこと、また、他のIPO経験企業のコアメンバーに教えを乞うこと、さらに、同じIPOを目指す企業のコアメンバー同士で意見交換を行うことやIPOセミナーに出席することなど、外部とのやり取りも多くなっていきます。

IPO企業は勉強熱心な方も多く、コミュニティーも活発に活動しています。その中で、人脈が形成されることは重要な経験になることが多いと思われます。

 

  • 元CFOの解説

ここからは、元CFOの立場からの解説をいたします。改めて今回のテーマは、「IPOを進めている企業で働いている人のメリット」についてです。

私自身が、キャリアの中でIPO準備会社にて取締役管理部長CFOという立場を務めた経験があり、そのときに得た知識や経験、人脈は貴重なものであったと思っていますし、今もそれが様々な面で自分の力になっていると感じています。

IPOは、とてもチャレンジングなプロジェクトです。前述の通り、IPOを目指す会社が数多ある中で実際にIPOにたどり着ける割合というのはほんのわずかであり、それ以外の大部分がIPOを達成することができないということになります。IPOを目指して長期にわたりハードな活動をしながらIPOを達成できないというのは会社にとっても働いている人にとっても非常につらいものですから、目指すからにはIPOを達成しその後の企業成長につなげられることが理想ではあります。が、一方でIPOを達成しなければそれまでに行った準備のための活動がすべて無駄になってしまうのかというと、そういうわけではありません。

IPOを目指す中で行う活動(内部管理体制の構築、人財採用、資金調達など)は、本質的にはすべて会社の基盤を強固にして高い事業成長を実現するために行うものです。そこで行われることはIPOを目指すか否かに関わらず多くの会社にとって必要なことです。IPOの実現に至らなくても、その過程で得た会社の強固な基盤はその後の事業運営にきっとプラスの影響をもたらすはずですし、その体制構築の経験というのは(IPO実現への道半ばまでであったとしても)その会社にとっても別の会社にとっても、得がたいものです。

また、IPOに関わる業界とでも言いましょうか、IPOを目指す会社とそれをとりまく様々な会社で構成される業界は、実はとても狭い世界です。IPOを目指す会社、証券会社、監査法人、証券印刷会社、証券代行業者(信託銀行など)、その他専門家(弁護士、税理士など)などが日頃から様々な場面で情報交換を行っています。彼らとの関わりなくしてIPOの達成はあり得ません。

IPO準備活動を進めていると、そこに登場するプレイヤー(各社の担当者)とのつながりが徐々に形作られていきます。実際のIPO準備活動は彼らの協力を得ながら進めていくという部分が多いので、IPO準備会社にとってはその人脈を既に持っている人財を社内に置くことができるかどうかで、いろんな面でのスムーズさがずいぶん変わってくることになります。会社としてはそういう人財が欲しいと思っているわけですから、本人にとっては一度その人脈を得られるとその後の活躍のフィールドが広がるということになるわけです。

余談ですが、そのIPOに関わる業界の中では人財に関する情報も日常的に飛び交っています。どの会社も良い人を探し求めていますから、彼らの中で名前があがるような価値ある人財になることを目指すのもよいかもしれませんね。もちろん、IPO準備や事業成長に真摯に取り組む姿勢が結果としてそれにつながるのだというのは言うまでもないことです。

実際にやっていただけると肌で感じることになると思いますが、IPO準備活動というのはとてもハードなものであり、それに関わるメンバーには相応の覚悟が求められるものです。数年単位の長丁場となるだけに気持ちを保つのが簡単でないときもあるかもしれませんが、それに関わるメンバーにとって経済的な面以外でも様々な意味でメリットのあるものだということを知っていただくことは、意味のあることなのではないかと思います。

 

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