証券会社、監査法人を選ぶ

IPOをスムーズに成功させたい企業の経営者もしくは上場準備担当者の方へ 「上場準備を支援した会計士」 と 「実際に上場準備を経験した元CFO」 がそれぞれの視点でIPOを進めていく上での検討・課題点の解説を行っていきます。 ・「会計士」は、上場準備における企業の要対応項目や考慮すべき点について形式面を中心とした解説をします ・「元CFO」は、IPOの実体験を踏まえた失敗談やベストプラクティスを含む社内の上場準備対応実務を中心とした解説をします


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今回は「証券会社、監査法人を選ぶ」について解説します

  • 証券会社 ・ 監査法人の役割

このコラムでも折に触れ、証券会社や監査法人について触れてきました。

改めて先ずは、それぞれの役割について見ていきましょう。

・証券会社の役割

上場に際しての証券会社の役割は数多くありますが、上場申請準備段階では資本政策や社内体制整備のアドバイス、上場に当たっての手続きのサポートや公募・売出し等を引き受けるための会社内容の審査(引受審査)などを行います。

また、上場のための公募・売出し等を引き受ける際には、一連の事務手続きを日程に従って実行していく役割を担います。

 

・監査法人の役割

IPOに際しては、証券取引所の規則により、金融商品取引法監査に準ずる監査を受けることが要件として求められます。具体的には、上場申請の直前々期(N-2期)、直前期(N-1期)、申請期(N期)の3期に渡り、監査法人の監査を受け、適正であるとの監査証明を受ける必要があります。

また、監査以外にも、この監査の対象となる財務諸表等の作成についての指導・助言を実施することも監査法人の役割となります。その他、IPO後に適用される内部統制報告制度(J-SOX)にも対応した社内管理体制の整備が必要になりますが、それについての指導・助言を実施することも監査法人の役割となります。

 

そのため、体制整備の観点では、証券会社と監査法人で多少重複することもありますが、基本的には、証券会社が上場準備に必要な資本政策と企業全体の体制構築のアドバイスをし、監査法人は財務諸表が適正に作成されるための体制構築のアドバイスをするとともに、財務諸表が適正であることについて証明するための監査を行うことになります。

 

  • 証券会社 ・ 監査法人を選ぶ

続いて、証券会社と監査法人を選ぶ際のタイミングや順番、選び方のポイントについてです。

証券会社と監査法人はIPOを実際に始めたいと思えば、直ぐにその選定を始めましょう。なお、どちらを先に選ぶかについて決まりはありません。

監査法人は上場申請の直前々期(N-2期)から監査を受けなければいけないため、本来は直前々期(N-2期)の始まる前に選ぶのがベストですが、遅くとも直前々期(N-2期)の上期までには選任しましょう。監査法人も監査を行う期間が必要なため、直前々期の終わり頃に選任して実際に監査をした結果、その修正にかなりの時間を要することが分かり、結果、IPOの時期を1年遅らせることになったというのはよくある話です。

証券会社の選任も同様です。本来は直前々期(N-2期)の始まる前に選ぶのがベストですが、会社の体制がしっかりしているのであれば、監査法人と同じく直前々期(N-2期)の上期までには選任するのが望ましいです。

実務的には、証券会社もしくは監査法人が選任され、その証券会社もしくは監査法人と上場準備の開始時期を決めながら、残りの決まっていない方を探すというケースが多いです。

 

選び方のポイントですが、証券会社については数も限られているため、実際の担当者と接触し、自社が属する業界に強いかどうか、担当者との相性(会社全般のアドバイスをもらうため、ここは結構重要です)、証券会社の規模や引受け手数料等を勘案しながら選任しましょう。

一方、監査法人ですが、先ずは大手・準大手監査法人から引受先を探すことが多いです。監査法人は大手及び準大手とそれ以外で規模にかなり差があります。大手・準大手監査法人も昨今は人で人手不足から、引受けを断るケースも増えてきています。その際には、中小監査法人に監査を依頼することになります。ただし、中小監査法人であっても、そもそも大手監査法人の出身者が多いため、大きな差がある訳ではありません。そのため、中小監査法人を選ぶ際には、監査法人のパートナーやマネジャーのIPO経験や相性を中心に選びましょう。

 

  • 会社の飛躍的な成長を支える重要な役割を経験

IPOは企業にとって長丁場の非常に大きなチャレンジであり、第二の創業にも近い重要な位置づけとな

 

  • IPOを達成したことによる経験を高く評価してくれる人財市場がある

IPOが成功する確率はどれくらいでしょうか。上場準備経験が長い監査法人時代の上司が言っていた

 

  • 元CFOの解説

ここからは、元CFOの立場からの解説をいたします。改めて今回のテーマは、「証券会社、監査法人を選ぶ」についてです。

 

前述の通り、上場準備を開始しようとすると早い時期に証券会社、監査法人を選び、それぞれと契約をして必要な準備作業を進めていくことになります。

ひとたび上場準備がはじまると証券会社や監査法人の主な担当者とは長期にわたる濃いコミュニケーションが発生することになりますので、それらを選ぶ際には担当者との相性はとても重要です。決めるまでの過程では契約後に多く関わることになる担当者がその場に出てきていない(証券会社や監査法人の中でも決定していない)ケースが少なくありませんので、契約交渉の段階で「契約後の担当者は誰なのか」をしっかり確認しておいたほうがよいでしょう。契約後に初めて会い、あまり相性がよくなかったとなれば、そこから続く長い上場準備作業を難しくしてしまうかもしれません。

また、おそらく多くの上場準備会社にとって、上場に関する経験やスキルの高い人材を社内に置くのは簡単なことではないでしょう。多くの場合、十分な経験者が社内にいないという状態でも上場準備をどうにか進めていかなければいけません。そのためには管理部門を中心とした社内各部門の方々のがんばりが不可欠ですが、同時に彼らに対しさまざまな事情を踏まえた適切な指導をするというのも、証券会社や監査法人に果たしてもらいたい重要な役割のひとつです。例えば証券会社の公開引受担当者(管理体制整備など上場準備作業全体の指導をしてくれます)や、監査法人の現場担当者(監査手続きを実際に行ったり、その進め方などの相談相手となることが多いです)が、単に自身の役割を手続き的に進めるだけにとどまらず、上場準備会社側の事業内容や企業文化、組織の状況、考え方などを理解し、適切な進め方を一緒に考え指導することについて積極的になってくれる人かどうか、より端的に言えば「上場を目指す企業を応援したいと思ってくれている人かどうか」といった点が非常に重要だと私は思っています。

そういった点を見極めるためには、業務の必要範囲を超えた会社の成り立ちに関する説明や、会社の在り方に関するディスカッションなどの手間も惜しむべきではありません。自分たちが何を考え、どういう思いでどんな事業をどんな方法で展開しようとしており、なぜ上場が必要なのか、そういったことを本音で語り合い、証券会社や監査法人がそれを進めるために必要なパートナーであるという共通認識を作ることができれば、その後の上場準備もとても進めやすくなるでしょうし、その後に待つ上場申請書類の中に書く内容や、会計基準の適切な適用、どのような内部管理体制を構築するか等についても一貫性のある、社内外にとって納得感のある上場準備ができるようになるだろうと思います。

上場準備をしている会社の経営者に話を聞くと、残念ながら「証券会社とは利害が対立する」「形式的な指導ばかりで事業をわかっていない」「監査法人は決まった手続きをするだけだからどこでも同じ」というような声を聴くこともあります。私はそのようには思いません。証券会社や監査法人は、上場準備の中で自社の未熟な点を指摘し、どのように改めていくのがよいのかを一緒に考えてくれる重要なパートナーです。彼らとは上場準備の中で一緒に議論したりぶつかったり時には食事を共にしたりしながら上場準備を一緒に進める仲間になるんだという意識で選ばれるのがよいだろうと思います。

 

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